こんにちは。ゆきのしんです。
ゆきのしんのメインのお仕事は「会社の医務室みたいなところに産業医と一緒に居たりする女の人」です。
業界用語は「産業保健師」
英語では「Occupational Health Nurse」(実際にはCompany Nurseのが通じやすい)、
このほか、企業保健師とも言われます。
保健師とは看護師資格に加えて取得可能な国家資格です。
学校の養護教諭や、市区町村の保健師さんなど、主に病院以外でお仕事をしているナースみたいな感じです。
ここでは自己紹介も兼ねて、産業保健師のお仕事をご紹介します。
ナイチンゲールは理系女子
物事の本質を知るには、創始者の想いに触れること。
近代看護の祖はイギリスのナイチンゲールさん(1820-1910)。
上部写真はロンドンの聖トーマス病院に併設されるナイチンゲール博物館。観光向きではないマジメ展示で、お人柄が感じられます。
クリミア戦争での負傷者への献身的な態度から「クリミアの天使」と呼ばれるナイチンゲールですが、功績は雄々しいのです。
・負傷者の死亡率の原因は傷の程度ではなく不衛生な環境と特定し、40%以上だった死亡率を3か月で5%以下に減少させたり…
・その後、病院建築、初の看護学校設立、社会活動、統計、執筆…を通し、看護師の地位を ”召使い” から ”専門職” に向上させたり…
つまり、統計データに基づく理論と大規模実践の功績が素晴らしい!
そのココロは「負傷者のケア」

畏れ多いのですが・・・とても共感します…
私は企業ナースのお仕事は「社会という戦場での不調者のケア」だと捉えています。
現代社会では、様々な競争があり、原因も誘因も複雑化しています。
産業保健師のお仕事は、個人・組織の全体を観察し、過剰/減退ポイントを見極め、効率良く回復していけるようにケアすることです。
具体的なケアの方法は・・・
手当ては「セルフケア力UPと労務施策対応」
対個人にはセルフケア力(自助力)のアップを、
対組織には労務施策で対応します。
労務とは労働時間管理、各種健康診断、疾病等による休職対応等など。
大抵は、人事や経理と近い部署にいます。
産業医や保健師・看護師は労務担当者と共に、労働安全衛生法・規則に基づき施策を運用し、労働基準監督署に毎年報告します。
私たち医療職は面談等の日々の個別対応から全体像やリスクを推測し、運用に活かしていきます。
対個人のセルフケアはアメリカの看護師:ドロセア・オレムさんの看護理論「セルフケア不足理論」を元に説明します。
これ、看護学では有名な理論ですが、難しいのでザックリ、そして言葉を書き換えてます。(先生方、ごめんなさい)
・人は自力での遂行力が不足したとき、ケアを必要とします
・看護者は本人のセルフケア能力を勘案し、最終的に全て自分で出来るようになるためのケアを選択します
・心と身体のサポートをします
・見合った環境を維持、提案、紹介します
・症状等の詳細な説明、具体的な手技の指導をします
なんだか地味で当たり前の事に見えますが、当たり前のことを具体的に実行していくことがとても大切です。
挑戦のためのリスクヘッジとして
重篤な病気を治療中の方は、当たり前の生命維持のために24時間ケアが必要です。
心のバランスを崩した方は、当たり前に働いていくために、部分的にケアが必要です。
糖尿病になりかけている方は、当たり前の健康をセルフケアしていくために部分的にケアが必要です。
私たち医療職は、当たり前の健康が当たり前でないことを実感している職業です。
健康からのほんの少しの逸脱が不意に大きく逸脱していくリスク、後戻り出来ないレベルに入るタイミングが来ることを知っています。
個人の心身の健康維持が組織の健康をつくる。
個人・組織が挑戦していくために、個人の健康維持をサポートするのが私たちのお仕事です。
経験上、慎重になり過ぎ、大げさなくらいがリスクヘッジ(危機回避)には丁度良いと感じています。
(だってすぐに忘れちゃうでしょ、当たり前のありがたさ)
「天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である」