ゆきのしんです。
「精密検査の結果、実は…」
「上司に…」
「部下が…」
「子どもがお友達を…」
「親が急に…」
「先日の地震で…」
など。突然の出来事のご相談を受けた時、いつも頭に浮かぶのはアメリカの精神科医:エリザベス・キューブラ―・ロスの「死の受容の5段階」です。
死の受容の5段階
ロス医師は牧師と共に2年半かけて約200名の ” 死にかかっている ” 末期患者へのインタビューを1969年に著書「死ぬ瞬間」で発表。大ベストセラーとなり、その後の死生学や尊厳死、ホスピス等の考えに多大なる影響を与えました。
当時は今よりもはるかに ” 病気・死 ” を語ることがタブーだった時代。
ここまで実際に患者さんに語って頂くことは現在でも難しいかもしれません。
私が初めて読んだのは1992年、大学1年生の頃。日本ではまだまだ癌告知が一般的ではない時代に、告知の是非云々ではなく、リアルな人間の姿を丸ごと提示され、人に向き合う職業の素晴らしさと当時に、畏怖の念を抱きました。
「死の受容の5段階」を簡潔に書きます。
第1段階 | 否認と孤立(間違いだ,あり得ない) |
第2段階 | 怒り(なぜ私が!) |
第3段階 | 取り引き(これをすれば治る!,これを諦めたら良くなるはず) |
第4段階 | 抑うつ(喪失感) |
第5段階 | 受容(必ずしもポジティブではない) |
もちろん、全てこの通りに進むのではなく、前後したり入り混じったりしながら経過します。
<グリーフケア、グリーフワーク、死別悲嘆の総合情報サイト「グリーフ・サバイバー」死ぬ瞬間を読む> より引用
上記リンクのサイトは、とても優しく、易しく書かれており、ご興味ある方はご一読を。
心の安定のために理論を取り入れる
このプロセスは予期せぬ出来事や耐え難い出来事に遭遇した時にも助けになると思います。
実際に私も何度も助けられました。
脳科学や心理学では、ショックな出来事があると感情・情動が優位になり論理思考が落ちると言われています。
そんな時にはこういった理論的情報を取り入れてあげると、過剰になった情動面が安定するそうです。
こういった理論によって今後の予測がある程度つけられると、不安が和らぎ、目の前の課題に取り組みやすくなるのです。
心の複雑さは皆同じ
人は毎日何かしらを感じながら過ごし、クライシスの時はその感情の波が大きく不安定になります。
怒りも悲しみもごちゃ混ぜで、日々変化していく。
良くなったと思ったらまた凹む。
それでも時間は進んでいき、避けられない事実は変わらずにある。
恋人と別れた時も、誹謗中傷を受けた時も、傷ついたり傷つけた時にも、人の心の複雑さは変わらないように思います。
そんな時、専門家に話すのも一つの手です。
近くに専門家がいなければ、匿名の電話相談はおすすめです。
素性を知らないほうが安心して ” 素 ” の部分を話せることは往々にしてあります。
出来事が大きければ大きいほど、人に伝えにくくなります。
話を聞く相手への負担を考えたり、言葉にすることでより一層自分が傷ついてしまったり。
そういった心配がないのが、匿名の電話相談です。
専門家は相談内容から日々学んでいるので負担にならないことを覚えておいてください。
きっと、患者さんがロス医師のインタビューにあれほど答えてくれたのはロス医師も学ぶ姿勢が明確にあったからだろうと思います。
そして常に在るのが「希望」
死にゆく方々に、最期まで常に存在しているのが「希望」だそうです。
死は越えられない現実です。
どんなに越えるのが困難な出来事であっても、きっと私たちは彼らよりはるかに容易に、希望を見出すことが出来るはずです。
それが彼らが私達に与えてくれたプレゼントだと思います。
希望を見出すために…
前述の表のリンクページの最下に、ロス医師の晩年を特集したNHK番組の動画があります。
当時の活動場面が垣間見られますが、多くの病気が治りにくかった40年程前の少々ショッキングな映像も含まれています。ご興味のある方のみどうぞ。
晩年、要介護状態になったロス医師の自由な言動を責める人もいたようですが、私はその正直な姿を尊敬します。ロス医師が患者さんを敬い共に生きて学んだからこそ、最期まで堂々と自分を生きられたのだと思います。
最後に。
希望を見出すためのヒントとして動画中の晩年のロス医師の言葉を引用します。
死んでいくことについて 何を感じ 何を恐れているのか
どうしたら我々は彼らの助けになれるか
ごまかすのをやめ 正直になれるか
恐れと対峙する手助けをしなければだめ
自分が何を恐れているかがわかれば 人はそれに対峙することができる
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